111758 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

「帝王切開は最悪の出産方法」なのか

これは独り言です。
根拠をもって論じあいたいという性質の記事ではありません。
癒されない心の傷を見つめる為の、私の個人的思いを綴っています。

自然分娩は素晴らしい。
経膣分娩こそが正しいお産で、帝王切開など西洋医学の介入を受けたお産は邪道で可哀相だし、最悪の方法。

こんな印象、そこまでではなくても、なんとなくでも経膣分娩をめざしてるのにドロップアウトしたら帝王切開になる、というようなニュアンスの印象をもっていませんか?
そんなマイナスイメージ、印象をどうして持っているのか、気にした事ありますか?


私は緊急で全身麻酔下の予定帝王切開での出産が決まりました。
大きく息を吸って、3回程したら、意識が無くなり、次にはもう、お腹に子供はいませんでした。
出産前、年齢はそこそこ高いものの、あまり知識もなく、誰もが一度は手にするのでは? と思える程メジャーなマタニティ雑誌を数回買いました。
他に、産院で待ってる時に別のマタニティ雑誌をよんでました。
そこで、ふと気になった事です。

今は、体重管理が昔より厳しく言われてる事が多いです。
そうした雑誌でも、適切な食事や運動、体重増加などの危険性について解説を試み、読者たる妊婦
のためにリスクを減らすのに有用なアドバイスを多く見かけました。
そんな中で、帝王切開について、どのように書かれているでしょうか。

体重管理に失敗したら最悪は帝王切開で産むハメに! (ひぇ~)
(私が見たのはマンガ式でしたので、ひぇ~は妊婦の台詞です)

そんな感じでした。
いや、太り過ぎが良くないのは確かなんです。
太りすぎると合併症を起こしやすくなり、トラブルから母子の健康に悪影響が出るかもしれません。出産にしても難産になりやすく、これ以上は命に関わると判断されて緊急帝王切開になるほどに悪化するかもしれません。
でも、考えてみてください。帝王切開(予定であれ緊急であれ)が最悪なんではないんです。
出産現場でそう判断せざるを得ない状況に陥る事、が問題なんです。
特にお産の現場でトラブルの末に緊急帝王切開になった場合、帝王切開に切り替える判断をした理由になる状態(母子の状態が危なくなる)事、どちらかが・もしくは共に命を落としてしまう事が最悪の事態なのではないですか。
帝王切開は最悪の事態にならない為に行われるお産の場への医療介入だと私は思います。
帝王切開自体が最悪の事態ではないのです。
帝王切開を経験して思う事は、やはり開腹し臓器を切っている訳ですから、産後すぐに小さい我が子の世話をするのに気力・体力の面でベストの状態で始められない事はマイナスポイントだと思います。
(これにしても、個人差があって、自然分娩でも調子の戻らない方もいると思います。帝王切開~最悪なコンディションと決まって無いのと同様に、経膣分娩~ベストコンティションとも限らないでしょう。

もちろん、そんなトラブル無く出産できる方が、母子の健康状態や産後の母体の快復にしてもベストでしょう。
雑誌・両親学級・医療従事者など様々な人が言うマタニティのときのコントロールを考えず好き勝手していると、出産・産後に苦しい思いを母子ともにする可能性が高くなりますよ、というアドバイスは、適切だと思います。
でもその際に、「でないと帝王切開になっちゃうよ」という脅しは、適切ではない、いけない言葉です。
私には、「悪い事したら死んだら地獄に落ちるよ」という脅し方と同義に感じます。
実際はどうであれ妊娠経過中に頑張らなかったから・落ちこぼれた人がするのが帝王切開という出産方法といってるように聞こえてしまいます。
そんな風に脅かされ続けて、妊婦や妊婦を支える周囲の中に帝王切開と言う出産方法に対してどんな印象が出来ますか。
実際に自分が帝王切開で出産したら、どう感じると思いますか。

メディアや病院などの多くは、帝王切開の危険性や帝王切開に至るのは最悪の事態というようなイメージを妊婦や周囲に植え付けておきながら、実際の帝王切開による出産をした人に対する精神的ケアを行いません。
病院等は帝王切開なら何日、経膣分娩なら何日、と大概の場合は入院している期間も一律で決まっています。(よほど問題を抱えた人はまた違うでしょう)
帝王切開の場合の方が数日長い入院期間ですが、これは開腹してるための身体的なケアがメインでしょう。精神的なケアについては、入院施設スタッフの声かけ、受動的な相談に乗る以外のプログラムがあったときいた事ありません。多くの場合、精神的ケアまでスケジュールに入ってないと思います。
その結果、帝王切開で出産した事に苦しみを覚えたり、深い心のキズを残したりするケースが出てきます。

帝王切開を脅しの常套句にしている人たち。

どこのサイトでも育児雑誌の読者欄でもなんでもいいです、マタニティ・育児のコミュニティでの帝王切開経験者の苦しい心の内を綴った書き込みを見てください。
経膣分娩できなかった事への罪悪感。帝王切開故に見ず知らずの人からも傷つく言葉を投げかけられた悲しい経験談。
産後でこれからの子育ての事でも不安な気持ちでいっぱいの新米ママに浴びせられる、励ますどころか心ない中傷めいた言葉の数々。
そうした精神的ダメージを受けた人たちへの精神的ケアがされてない(か不十分な)事、知っていてください。
よかれと思ってのアドバイスをしているにせよ、言葉の使い方や言い回しが適切かどうか、今一度再考願いたいのです。
もしかしてあなたたちは、知らずとはいえ、言葉によって人の心を傷つけてしまってるかもしれません。

お産は病気ではないから、不必要に医療の介入をしなくてよい。
そういう意見はよく見かけます。昔は産婆さんに着てもらって自宅で産んでたんだから、と。
確かにそうです。トラブルがない状態でなら素晴らしいお産のスタイルです。
昔は、その結果、母体が命を落とすケースがあったでしょう。
今だとそういう事態を防ぐ為に帝王切開の判断をなされて帝王切開というお産のスタイルで出産をして事なきを得ている事も多いと思います。

私にとって出産の場での最悪の事態というのは、母子ともに亡くなる事です。
もしくは母か子が命を落とす事。
ううん、私だけじゃない。医者・助産婦・看護師・医療スタッフや妊婦やその家族含めて、みんな同じ認識だと思います。
出産と言うのは、昔も今も、誰にとっても命がけです。
どんな不測の事態がおこるか分からない。
沢山の妊婦を抱え、それ以外にも病気の方も受け持ち、24時間、待った無しの予告なしの激務の中、私達を励まし、支えてくださって、本当にありがとうございます。
昨今、激務と言われ、どんどんとお産の現場から医師が不在になっていく中、本当に頭が下がる思いです。
時に戦場の様な緊急の現場でくたくだに疲れ果て、それでも産まれた子を抱く新米ママやパパに、笑顔で接してくださってありがとうございます。

そんな現場の中でつい口にしているかもしれない、メディアのライターの方も何度となく書いてきたであろうにその言い回しについて、今一度ご再考くださり、配慮いただけたら幸いです。






© Rakuten Group, Inc.